今の子供は昔の子供よりもあごが小さい?

 「最近の子供たちは、軟らかいものばかり食べてあごが小さくなっているから歯並びが悪い」とう話を聞いたことはありませんか?一時期、このような説がさかんに言われていましたが、実はそうではなかったのです。

 戦後、子供たちの身長は7〜8cm以前に比べて伸びています。日本小児歯科学会で調査した研究では、あごの骨も戦後大きくなって面長になり、その結果、あごが小さく見えるようになったということがわかりました。だからと言って、よく噛む事は、心と体の健康には極めて大切であることを忘れないでください。

 しかし、実際には歯並びのよくない子も増えています。その理由は、あごが小さくなったというよりも、栄養がよくなって、上の前歯が大きくなっているからです。

 

噛み合わせと全身の健康


 噛み合わせによって、背中が曲がってしまうとか、内臓に悪い影響が出てしまうことがあると聞いたことがあると思います。歯が抜けたままにしておいたり、治療途中でやめてしまったり、または高さの合っていない被せ物が入ったりすると、噛み合わせは崩れていきます。
 噛み合わせとは、奥歯が中心で前歯はあまり関係ないと思われているかもしれませんが、前歯も奥歯と同じくらい噛み合わせに影響を持っています。

噛み合わせのメカニズム

 人間のあごは、関節と筋肉によって開閉しています。例えるなら、ひもでつられているブランコのように、ひも=筋肉の動きによって前後左右に動ける状態になっています。筋肉が収縮して口が閉じてくると上下の歯が接触して物を噛み砕くわけです。

ストレス?肩こり?
 私が思うところの理想の噛み合わせとは、この筋肉の自然の伸縮運動と歯の最大の噛み合わせるポイントが一致することがよい噛み合わせと考えています。噛み合わせが悪いと口を閉じてきて、上下の歯が接触したとたんあごは歯によって誘導され、筋肉の本来噛みたい位置とは違う方向へ持って行かれてしまいます。結果ストレスを引き起こし歯ぎしりや、肩こりの原因につながっていきます。
 たとえば、奥歯がちゃんとそろっていて、左右の噛み合わせも問題ないのにあごに痛みが出たり、歯ぎしりが強い患者さんがいます。
 そういう症状では、あごの関節のチェックと同時に、筋肉と歯の位置関係を調べます。歯を接触させずにあごの筋肉の動きのみを見る特殊な装置をつけて、筋の動きと歯とのずれを測定します。前後左右のズレが分かるのですが、前後のズレに絞ってお話します。

噛み合わせの黄色信号

 噛み合わせの前後のズレをはどういうものかというと、まず後ろにずれているときは、上下の前歯の強い当たりによって起こります。本来筋肉がもう少し前で噛みたい位置なのに、前歯に誘導されて無理やり後で噛むように押さえ込まれてしまう状態です。歯にも大きなストレスがかかりますが、あごも後退位をとらされてしまうため関節の痛みを招くこともあります。

 上下の歯の当たりというものはとても微妙で、強いと今のような状態になるのですが、隙間が空きすぎてしまうと、麺類が噛み切りづらかったり、息がもれて発音しにくくなります。

 逆に前へのズレですが、本当は完全な受け口ではない症状なのに、やはり上下の歯がぶつかると、歯に誘導されて無理やりあごを前に引っ張り出されてしまい、受け口に見せているケースもあります。前歯を治療した後に、あごが疲れるようになったとか、被せた歯が壊れてしまった場合などは、もう一度噛み合わせを見てもらう必要があると思われます。